これは労災?あれは労災?~通勤災害編~

しごとのコラム
タロウ
タロウ

昨日、帰り道で転んじゃいました。これって労災使えますよね。

ココア
ココア

そうね。でも昨日は学生時代の友達と飲み会って言ってなかった?

タロウ
タロウ

そうなんです。飲みすぎてその帰りに転んじゃいまして…

ココア
ココア

そうだったのね。でも飲み会などで一度、通勤経路を外れてしまうと、そこからの帰り道は労災上の通勤にならないのよ。つまり労災は使えないってことなの。

タロウ
タロウ

そうなんですか!?残念ですが仕方ないですね。

こんな経験はありませんでしょうか。

労災が認められる通勤は実際の通勤とは異なっております。

前回は労災保険の業務災害のあんなケースやこんなケースについて書かせていただきました。

引き続き、今回は通勤災害とは何かについて書かせていただきます。

よろしければお付き合いください。

業務災害編はこちら。

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通勤災害とは「通勤」中の災害で、要件を満たすと認められます 。

またしても「そのまんま」な話なのですが、労災保険法上での「通勤」に該当するかが大事なところでして、これがまた厄介なところでもあります。

内容を見てみましょう。

この労災保険法上での「通勤」 とは、就業に関し「次に掲げる移動」を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとされています。

「次に掲げる移動」とは…

  • 住居就業の場所との間の往復 (典型的には家から職場まで)
  • 就業の場所から他の就業の場所への移動(A社からB社といったケースです)
  • 住居就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動(単身赴任者の住居間の移動のようなケースです)

移動そのものに関しては比較的そのままなのでわかりやすいのかな、と思います。

問題は緑文字のその他の要件です。

一つずつ確認していきましょう。

「就業に関し」とは…

ケガの当日に就業することとなっていたこと、または現実に就業していたということを意味します。

そのため、定時出勤に限られず遅刻や早出のときも基本的には就業として認められます。

一方で、休みの日に忘れ物を取りに行ったときなどは認められないことになります。

「合理的な経路及び方法」とは …

労働者が一般に使うであろうルートや方法のことですが、経路方法に分けていくつか補足させていただきます。

まず、合理的な経路については、通常の通勤の経路であれば、複数あったとしても大丈夫です。必ずしも最短、最速である必要はありません。

また、職場に届けている経路でなくても、当日の交通事情(電車の遅延・運休など)によりいつもの違う路線を使ったときなどにやむを得ずとる経路も合理的な経路となります。

理由もなく遠回りしていた時などはダメということですね。

合理的な方法については、特に難しいことはなく普通に電車や車に乗ってればよいということです。無免許運転や飲酒運転ではだめということですね。

「業務の性質を有するものを除く」とは…

移動中のことであっても業務の性質を有している場合は、通勤災害としては認められません。

しかし「業務災害」として判断されますので労災が使えなくなるということではありません。ご安心を。

出張先へ向かうときや休日の緊急出勤に向かうときなどは業務中ということになります。

「住居」とは…

この住居はいわゆる「住民票住所」より広いものになっています日常生活をしていて就業の拠点になっていればオッケーです。

住所地とは別に会社の近くにアパートを借りているときなどは、この場合の住居に該当するということですね。

一方、友人の家に泊まってそこから出勤といったケースでは認められないことになります。

「就業の場所」とは …

これは基本的に勤務先会社や工場などをそのまま指すことになりますが、外勤業務を命じられている方はそこが就業の場所となり通勤災害の要件を満たします。

ちなみに、顧客さんのところへ打ち合わせ等で直行するときのケガは「業務災害」になります。 業務の性質を有するということですね。

ドラクエウォークも?寄り道にご注意!「逸脱」「中断」について。

先ほどの要件を満たせば、通勤災害認定に大きく近づくことになります。

しかし、どんな場合でも通勤災害と認められる訳ではありません。逸脱や中断をした場合、その後は労災保険上の通勤とはならなくなる、という決まりがあります。いったいどういうことでしょうか。

「逸脱」とは、通勤の途中で合理的な経路を逸れることとされています。「中断」とは、いわゆる寄り道のことで、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うこととされています。

例えば… 

  • 居酒屋でお酒を飲んでから帰る場合
  • 映画館で映画を見てから帰る場合
  • パチンコ屋で勝負してから帰った場合

…などが該当します。

この逸脱・中断はあくまでもその後が通勤にならなくなるということです。

そのため、居酒屋へ立ち寄るところ、または居酒屋方向へ道を変えるところまでは通勤として認められるということです。

居酒屋から住居までの道で転んだ場合はダメということですね。

最近流行の、ドラクエウォークで通勤経路から外れた場合も逸脱・中断になりますのでご注意ください。

ただし、トイレに立ち寄るなどの些細なことでは中断とはなりませんのでご安心ください。

スーパーで夕飯を買うときは?日常生活上必要な行為について

すこし厄介な決まりである「逸脱・中断」ですが、

日常生活上必要な行為であって、やむを得ない事由により最小限度のものである場合は、逸脱・中断の間を除いて、通勤と扱われる

労災保険法

とされています。

言い換えますと、例えばスーパーで夕飯を買った後の帰り道も労災保険上の通勤としてオッケーですよ。でも、スーパーの中で転んだ場合は通勤中とはなりませんよ。ということです。

他にも、色々なケースがあります。さて、どんなケースでしょう。

  • 日⽤品の購⼊や、これに準ずる⾏為
  • 職業訓練や学校教育、その他これらに準ずる教育訓練であって職業能⼒の開発向上に資するものを受ける⾏為
  • 選挙権の⾏使や、これに準ずる⾏為
  • 病院や診療所において、診察または治療を受ける⾏為やこれに準ずる⾏為
  • 要介護状態にある配偶者、⼦、⽗⺟、配偶者の⽗⺟並びに孫、祖⽗⺟および兄弟姉妹の介護(継続的に、または反復して⾏われるものに限ります。)

日⽤品の購⼊や、これに準ずる⾏為のなかに先ほどのスーパーのケースが含まれます。

スーパー以外にも単身者が定食屋で食事をする行為理髪店に立ち寄る場合などが該当します。

それ以外はそのままの内容となりますが、逸脱・中断の間は除かれるので例えば選挙の投票所でけがをした場合などはアウトということになります。

これらをもとに「通勤災害」になるかどうか判断することになります。大変ですね。

図で表すと以下のようになります。(愛媛労働局HPより引用させていただきました。)

まとめ

以上、 思ったよりも奥が深い通勤災害について、

簡単にではありますが書かせていただきました。

ひとまずは一般的な例として参考にしていただければと思います。

近年は働き方が多様化しております。

時代の流れで通勤の範囲が変わったりするのかな、と考えたりもしております。

色々な働き方の人が平等に保護されるようにあってほしいですね。

労災保険のことをもっとお知りになりたい方は

こちらよりお気軽にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

☆この記事を書いた人☆
社労士 鈴木翔太郎

東京の秋葉原の社会保険保険労務士です。
社会保険・労働保険などの手続きを中心に労務関係のお仕事をしています。ハローワークや年金事務所・労働基準監督署へ提出する書類でお困りの際はぜひお声かけください。
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