さっき、トイレに行く途中に転んじゃいました。打撲しちゃったようです。
大丈夫?あのあたり滑りやすいからね。
これって、仕事中のことじゃないから労災は使えないんですか?
トイレや水分補給中のケガは業務災害になるので労災で大丈夫よ。
そうなんですか。安心しました。
このように、労災が使えるか使えないか判断に困るケースがあるかと思います。
今回はどういう場合に労災保険上の災害(労災保険が使える)となるのかについて書かせていただきます。
労災保険は業務災害と通勤災害がありますが、まずは業務上の災害である業務災害編です。
業務上とは仕事が原因であること
そのままな感じもしますが、この原点がとても大事なポイントになります。
なお、労災保険は一日だけのアルバイトさんや不法入国の外国人労働者さんであっても補償を受けることができます。
そしてこの「業務上」であるかどうかは「業務遂行性」と「業務起因性」があるかどうかで判断されます。
余計わからなくなる2つの用語ですね。どういう意味か見てみましょう。
業務遂行性=労働者が使用者の支配下・管理下にある状態であること。
簡単に言うと、仕事をしているときに発生したケガ・病気かどうかということです。
業務(仕事を)遂行(しているとき)性といったところでしょうか。
業務起因性=業務とケガ・病気の間に一定の因果関係があること。
こちらは、仕事がケガ・病気の原因かどうかということです。
業務(仕事が)起因(原因かどうか)性といったところでしょうか。
これらが認められれば業務災害になるので労災扱いで病院に行けます。
つまり無料で治療が受けられます。ですが、これらが認められるかわかりにくいケースがありますので、以下で具体的に見てみたいと思います。
業務災害になるとき・ならないとき
あくまでも主な例なのですが、以下のような使い分けが一般にされております。
- トイレや水分補給(生理的行為)のために作業を中断しているときのケガ
→業務災害になります。逆に生理的作業中以外では認められないということですね。
- 昼休み中に会社内の階段で転んだとき
→業務災害になります。会社内であることがポイントですので、定食屋へ行く途中に転んだときなどは認められないことになります。
- 近くのコンビニへ飲み物を買いに行った時のケガ
→こちらは、「飲み物を切らしていたから買いに行った」などの合理性があれば業務災害となります。つまり関係ない買い物中ではだめということですね。
- 出張中のケガ
→通常出張中に起こりうることであれば業務災害になります。そのため、出張の帰りにぶらり観光をしているときなどの私的行為中のケガなどは認められません 。
- 会社の行事(野球大会など)に参加中のケガ
→使用者からの積極的な命令を受け、参加が義務付けられている場合は業務上のものとなり労災が認められます。
行事の時間に対して賃金が支払われていたり、欠席者は賃金控除がされているという場合ですね。
反対に、任意でおこなわれるレクリエーションのようなものでは業務とはならないということになります。
最近では、職場での熱中症が増えていますね。
こちらは、熱中症の診断がされたうえで、熱中症が起こりうる労働環境や仕事との因果関係が確認され、熱中症にかかった原因が仕事以外に考えられないような場合(=持病が原因でないということです。)に、労災と認定されます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000509930.pdf
平成 30 年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況 厚生労働省より
他にもあんなケースやこんなケース
他にもいろいろなケースで業務災害になる・ならないといった例があります。
せっかくですのでいくつか例を書かせていただきます。
- 業務終了後にすぐ帰宅しようとした際に施設内の階段から転んでけがをした場合
→業務災害になります。 (基収第1724号より)
業務終了「後」のことなので業務そのものではありませんが、業務後すぐに帰ろうとしていた時のケガということで業務に付随しているとされ認められました。あまりにも時間が空いていたりすると認められない可能性があるということですね。
- 児童がバットで打った小石で、自動車運転中の運転手が負傷した場合
→ 業務災害と認定されませんでした。 ( 昭和31.3.26基収第822号)
業務のための運転中なので、業務遂行性が認められますね。しかし、バットで打った小石が運転手にあたるという事態は、あまりにもイレギュラーで運転の業務中に通常起こりうるとは考えられなかったため業務起因性が認められなかったのかと思われます。
- 不仲だった部下から仕事上の注意をしたところ、暴行されて負傷した場合
→業務災害と認められます。(新潟地裁判決 平成15.7.25)
これは仕事の注意に対しての暴行であることで業務起因性が認められました。職場内の暴行だとしても、完全に私的な怨恨で殴られた場合では起因性が認められないということになりますね。
まとめ
いかがでしょうかでしたでしょうか。
この辺りは社労士試験でもよく出るのですが、例が多すぎて一つ一つ全部は覚えきれません。
実際のところは個別に判断していくことが多いのかと思います。
労災事故は発生しないことが一番なのですが、
万が一発生してしまったら参考にしていただければと思います。
災害発生時の手続きについての記事は、こちら。
その他、労災保険について、もっと知りたい方は
こちらよりお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。