—仕事中ケガをして病院へ行ったタロウくんから、総務のココアさんへ電話がかかってきました。
全治10日とのことでした。すみませんが、お休みをいただきます。
じゃあ、休業補償の手続きをしなきゃね。
労災保険の休業補償って、最初の3日間は支給されないって聞いたんですが、その間は収入ゼロですか?
労災保険からの給付がない3日間は、会社が補償することになってるから大丈夫よ。
そうなんですね。早く復帰できるように頑張ります!
労働者が安心して働けるように、仕事中のケガを補償する労災保険。
病院の治療費はもちろん、長期の休業になったときは収入の補償もあります。
ところが、労災保険の休業補償は最初の3日間は支給がありません。
待期期間とはどういったものでしょうか。
事例と一緒に業務災害の手続きの流れをご紹介します。
業務災害ってどんなもの?というかたは➡こちらの記事をご参考ください。
[PR]契約手続きがオンラインで完結! 電子契約の電子署名・サインは「GMO電子印鑑Agree」 資料請求はコチラ業務災害で休業!手続きの流れと待期期間について
では、事例をご紹介いたします。(冒頭のやり取りをもとにしています。)
労働者の情報
氏名 タロウ (男性)
平成2年8月30日生まれ 29歳
住所 〇〇県〇〇市 〇-〇-〇コーポ101 電話番号 000-000-0000
災害発生の状況
令和2年1月28日 午前10時15分
事務所内の高い棚から段ボール箱を取ろうとしたところ、棚がぐらつき、箱を足へ落とし、負傷。左足甲の骨にひびが入る。
労災指定病院である△△病院(〇〇県〇〇市 〇-〇)へ行ったところ、全治10日の診断を受ける。
災害の確認者 総務部 ココア
休業中の給与は発生しません。
会社の情報
株式会社 黄金旅程
代表取締役 ケンタ
住所 〇〇県〇〇市 〇-〇-〇
電話番号 000-000-0000
労働保険番号 00-0-00-000000-000
第1フローは病院へ提出する「療養の給付請求書」(様式第5号)
フローとしては、最初に「療養の給付請求書」を病院へ提出します。
これを提出することで、医療費の支払いが労災保険からされることになります。
つまり、労働者さんは無料で治療を受けられるということです。
(様式第5号)という書類を作成します。
厚生労働省のホームページからダウンロード可能です。
➡ 厚生労働省 労災保険給付関係請求書等ダウンロード
通勤災害用は様式が異なっていますので、間違えないようにお気を付けください。
ここだけの話ですが、僕は途中まで間違えて書いてしまったことがあります…
こちらの請求書に上記の事例の情報を落とし込んだ記載例をご紹介します。
※ 現在は様式が一部変更されています。
フリガナは省略させていただきましたが、記入をお願いします。
また、赤い丸のところへ、印鑑を押すのを忘れないようにしましょう。
(押印は現在廃止されています。)
こちらを労働者さんへ、渡して病院に提出すればオッケーです。
あとは、病院が労働基準監督署へ提出することになります。
ちなみに、薬を薬局で別に購入するケースが多いと思います。
その場合は、薬局用の用紙も作る必要がありますので、病院欄を薬局の情報に変えてもう一枚作成し、薬局へ提出しましょう。
休業中の所得補償は「休業補償給付申請書」(様式第8号)
治療費の労災手続きが無事に終わっても、
タロウくんの会社では休業中はお給料が発生しません。
おそらくは、業務災害であっても、賃金の支払いは行わない会社さんのほうが多いかと思います。
そこで、労災保険の休業補償給付の手続きを行います。
様式は同じく厚生労働省のこちらからダウンロードできます。(様式第8号)
(別紙2)という用紙も一緒に提出しますので、お忘れなきよう。
厚生労働省の記載例をご紹介しますのでよろしければ、ご参考ください。
療養の給付請求書と同じような情報を記入していきますが、
振込先の口座番号や、平均賃金の情報などが追加されています。
支給金額は一日につき、給付基礎日額(平均賃金とほぼ同じ)の80%です。
なお、こちらの手続きは、
病院に証明をもらって、会社または労働者本人さんが直接労働基準監督署に提出することになります。
先ほどの、療養の給付は、病院に提出して終わりでしたね。
労働基準監督署の労災課へ提出しましょう。
労働基準監督署のお仕事紹介記事はこちら。
最初の3日は待期期間
さて、休業補償給付ですが休業初日から、支給があるわけではありません。
最初の3日間は待期期間と呼ばれ、待機が完成したあとの4日目から支給が始まります。
先程の事例では1月28日の午前10時15分にケガをしてます。
その日は早退して病院に行ったとすると、1月28日~1月30日で待機が完成します。(この場合、初日をカウントします。)
そのため、1月31日から労災の給付対象となります。
じゃあ、最初の3日間は給料も労災の給付も無いってこと?
と、お考えの方も多いかと思います。
しかし、この間は会社が休業補償を行うことになっております。(労働基準法より)
金額は一日につき、平均賃金の60%とされていますので、ご確認ください。
ちなみに、待機期間の3日は連続して休んでいる必要はありません。
飛び飛びでも通算して3日の休業があればオッケーです。
健康保険の傷病手当金は連続3日でしたので、混同しないように注意です。
待機が完成しているのに申請していないと、損になってしまうのでお気を付けください。
待機期間は労働者が希望すれば、有給でも可能
最初の3日間は、会社が60%を補償することを確認できましたが…
有給がたくさん残ってるので、有給を使いたいです。
と労働者が申し出たときは、どうなるでしょう。
結論から申し上げますと、この場合、有給休暇とすることも可能です。
有給休暇を使えば100%の賃金を受けられるので、実務上は希望する労働者さんも多いです。
ただし、あくまでも労働者が希望した場合のみ可能となりますので、
会社側が一方的に、有給処理することはできませんのでお気を付けください。
労働者死傷病報告の提出も忘れずに!
こちらの報告書は労災の様式ではないのですが、簡単にご紹介いたします。
この様式は、業務災害で休業が発生した場合、報告書として届け出るものです。
休業4日以上か、それ未満かで提出する様式や、提出期限が異なりますのでお気を付けください。
厚生労働省のページからダウンロードができますので、ご参考いただければと思います。
提出先は、労働基準監督署の安全衛生課です。
忘れがちなところですので、ご注意ください。
なお、通勤災害の場合はこちらの提出は必要ありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
業務災害は起きないことが一番望ましいですし、
安全配慮義務に基づいて、防止策を講じることも、とても大事です。
ただ、起きてしまった際の落ち着いた対処もとても大切です。
ご参考いただければ幸いです。
提出漏れの多い、労働者死傷病報告の書き方の解説記事は➡こちら
業務災害になるケース・ならないケースの解説記事は➡こちら
最後までお読みいただきありがとうございました。