高齢者の雇用は、これからの労働分野の大きなテーマになっています。
令和4年1月1日より、マルチジョブホルダー制度が始まります。
ブログへお越しいただきありがとうございます。
社会保険労務士の鈴木翔太郎と申します。
雇用保険は、加入要件があり要件を満たさないと加入ができません。
ところが、高齢者を対象とした加入要件の例外的な制度が令和4年1月1日より始まります。
今回は、雇用保険のマルチジョブホルダー制度をご紹介いたします。
【改正・令和4年1月1日スタート】雇用保険マルチジョブホルダー制度とは?
マルチジョブホルダー制度とは何だか、ものものしい名前です。
制度の概要を申し上げますと…
1つの会社では、雇用保険の加入要件を満たせなく、雇用保険に加入できない65歳以上の高齢者さんでも、複数の会社の仕事を通算して、加入要件の判断ができます。
➡要件クリアなら雇用保険に加入できる制度です。
まとめるとこういった感じです。
ちょっとよく分かりません…
確かに、内容が込み入っていますね。
ここからは、具体例で確認してみます。
まずは、雇用保険の加入要件をおさらいします。
例外もありますが、主な要件はこの2つです。加入要件については、過去の記事も参考ください。
加入要件のおさらいができたところで、ユキオさんに登場してもらいます。
65歳で会社を退職したのですが、その後2つの会社でアルバイトをしています。
週の所定労働時間は、A社=15時間、B社=10時間です。31日以上雇用されています。
現行の制度では、加入要件は一つの会社で判断をします。
そのため、ユキオさんは雇用保険に加入できません。
求人を探しても、短時間のパートしか見つからなくて…
退職した時の為に雇用保険に入りたいんだけど、要件を満たせない…
A社とB社を併せれば、20時間を超えるから加入できるんだけどなあ。
こんな悩みの人が多かったのかもしれません。
そこで65歳以上の高齢者さんを対象に、特例的に勤務を合計して雇用保険の加入要件を判断できるようになります。
これが、令和4年1月1日より始まる雇用保険マルチジョブホルダー制度です。
私のような、働き方をしていても雇用保険に加入できるようになるということですね。
加入は、任意です。
ユキオさんは、加入を希望していましたが、この制度での雇用保険の加入は、任意のものとなります。
希望しない場合は、今のまま(未加入)で問題ありません。
それでは、改めて雇用保険マルチジョブホルダー制度の内容を確認します。
雇用保険マルチジョブホルダー制度の対象は?
マルチジョブホルダー制度の対象になるのは以下の人です。
2つの会社とありますので、3つ以上で勤務していても合計できるのは2社ということになります。
一般的な雇用保険の要件と比べて、年齢要件があるところが要注意です。
本人がハローワークへ申出て、手続きをします。
ここからは、マルチジョブホルダーの実際の手続について確認をします。
※ なお、この記事では資格取得に絞った解説とさせていただきます。資格喪失の手続もマルチジョブ制度のものがあります。恐れ入りますが、資格喪失については、厚生労働省のパンフレットをご参考ください。
通常、雇用保険の資格取得や喪失の手続きは会社が行います。
ところが、今回のマルチジョブホルダー制度は、本人が直接手続を行うことになります。
マルチジョブホルダー制度で雇用保険に加入するときは、
私が自分で、手続きに行くということですね。
何か書類を作成するのでしょうか。
まずユキオさんに、用意いただくのは以下の書類です。
- 雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届(マルチ雇入届)
- 個人番号登録・変更届
- 被保険者資格取得時アンケート
1.と3.は新しい手続書類となります。
厚生労働省のホームページからダウンロード可能になる予定とのことですが、執筆現在(令和3年10月)まだ公開されていないようです。
2.の個人番号登録・変更届は、従来からあるものなのでダウンロード可能です。
マルチ雇入届は、本人記入欄と会社の記入欄があります。
本人記入欄を書いたら、それぞれの会社へ提出して会社記入欄を書いてもらいます。
私の場合は、A社とB社それぞれに会社記入欄を書いてもらえばよいのですね。
会社側は、該当欄の記入に加えて、確認資料の用意も必要とされています。
確認資料は以下の通りです。
・ 賃金台帳、出勤簿(原則、記載年月日の直近1か月分)
・ 労働者名簿
・ 雇用契約書
・ 労働条件通知書、雇入通知書
・ 役員、事業主と同居している親族及び在宅勤務者等といった労働者性の判断を要する場合は、別途確認資料
厚生労働省 雇用保険マルチジョブホルダー制度 の申請パンフレット より引用。
確認書類は、省略できないと上記の引用元パンフレットに書かれています。ご注意ください。
では、先ほどの書類3点と確認書類を提出すれば良いのですね。
提出先は、どこでしょうか。
提出先は、申請者本人の住所を管轄するハローワーク
提出先は、ハローワークです。
注意点は、申請者本人の住所地を管轄するところということです。
会社の管轄ではありませんので、ご注意ください。
ハローワークの所在地をご案内いたします。
ハローワークに申し出た日から加入
この制度の注意点は、申し出をした日から雇用保険に加入するという点です。
通常の雇用保険は、例えば10月1日からの加入手続きを10月20日行っても問題ありません。
(10月1日から加入できます)
マルチジョブホルダー制度は、10月20日に手続きをしたら、10月20日からの加入となります。
また、一度加入をしたら任意で脱退することはできません。
加入を検討する際、お気を付けいただければと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
- 令和4年1月1日より、雇用保険加入の特例制度であるマルチジョブホルダー制度がスタートします
- 65歳以上の対象者は、2つの会社(事業所)の勤務を合計して、雇用保険の加入ができるようになります。
- 会社の協力を得て、本人が自分で手続きをすることになります。
加入をすると、保険料が発生することになりますが、要件を満たすと退職後に給付金(⾼年齢求職者給付)を受け取ることができます。
育児休業・介護休業時の給付金も受給が可能になります。(要件を満たす必要があります。)
ご参考いただけますと幸いです。
なお、この記事は、厚生労働省のパンフレットを元に作成いたしました。
リンクをご案内いたしますので、合わせてご参考ください。
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