—とある会社を切り盛りする社長のケンタくんですが、給与明細書のことで気になることがあるようです。
うちの給与計算、健康保険料間違えてないかな?
毎回、確認してるんで大丈夫だと思いますが、何かあったんですか?
友達のマサルくんは僕と同じ標準報酬月額なのに、健康保険料が微妙に違うんだよ。
マサルさんの会社は健保組合に加入してますからね。それで保険料率が少し違うんですよ。うちは協会けんぽの保険料でちゃんと計算されてますよ。
そうなんだね。安心したよ。
ブログへお越しいただきありがとうございます。
社会保険労務士の鈴木翔太郎と申します。
協会けんぽと組合健保、健康保険には2種類の保険者があります。
聞いたことがある方も、多いかと思います。
しかし、実のところ、僕は社会保険の勉強を始めるまで、
健康保険の種類のことなどは全く知りませんでした。
両者はどんな違いがあるのでしょうか。
今回は、健康保険の保険者についてご紹介させていただきます。
ブログの内容を動画でも解説させていただきました。
併せてご参考ください。
組合健保?協会けんぽ? 健康保険の保険者の違いについて
保険者とは、健康保険業務の運営主体、実施機関のようなものです。
それに対して、加入者は被保険者といいますね。
その保険者は「全国健康保険協会」と「健康保険組合」の2種類があります。
一般に全国健康保険協会は「協会けんぽ」、
健康保険組合は「組合健保」と呼ばれています。以下は略称を使わせていただきます。
(なぜ協会「けんぽ」が「ひらがな」なのかは長年の謎です)
※医療保険というと共済組合や船員保険、国民健康保険もありますがここでは上記のものに絞って書かせていただきます。ご了承ください。
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協会けんぽは、もともと政府管掌健康保険と呼ばれるものでした。
「政管健保(せいかんけんぽ)」という呼び名に聞き覚えがある方もいるかもしれません。
社会保険庁の解体に伴い、全国健康保険協会に改名された公法人です。
こちらがいわば、一般的な健康保険の保険者という位置づけです。
組合健保の加入事業所以外はすべて協会けんぽに加入することになります。
「組合健保」は企業が独自に設立する保険者
組合健保は常時700人以上の従業員が働いている企業が単独で設立、もしくは、合計で常時3,000人以上の従業員がいる複数の会社が共同で設立し、
健康保険事業を協会けんぽにかわって行っている保険者です。
上記の人数から、
組合健保加入事業所は概ね大企業が多く、協会けんぽは、中小企業が多いのですが、
中小企業でも組合健保のところはあります。
あくまでも一般的にということですね。
業務内容を見える化させる日報ソフト【Pace】無料トライアル申込保険料率が違う?付加給付? 組合健保のメリット
協会けんぽと組合健保の違いはまず保険料率に現れます。
大企業が中心のため経営が安定しているのでしょうか。
健保組合は協会けんぽより保険料率が低いケースが多いです。
協会けんぽの保険料率は、都道府県ごとに決まり、組合健保は組合が独自に決めます。
また、付加給付という健保組合独自の保険給付を行っているところも多いです。
例えば…
- 高額療養費(医療費が高額になった場合の自己負担額の上限)
協会けんぽの高額療養費は、
標準的収入の場合、上限は約8万となっています。
これは簡単に申し上げますと、一カ月の医療費の自己負担分が約8万を超えた分は健康保険からお金が返ってくるというイメージです。
一方、一例となりますが、
健保組合はその上限額が、2万5千円ほどに設定されているところもあります(組合によって異なりますので詳細はご確認ください。)
2万5千円を超えたら、お金が返ってくるということですので、良いですね。
- 傷病手当金(私傷病で働けないときの収入保障)
傷病手当金についても、協会けんぽは支給期間1年6か月間が限度ですが、
組合健保は3年程度まで受給できるところがあります。
(こちらも、組合により異なりますので詳細はご確認ください。)
他にも保養所があったりといろんな特典があるようですね。
うらやましいです。
傷病手当金の解説記事は➡こちら
But… 減りゆく健康保険組合
メリットのたくさんある健康保険組合ですが、
近年は財政難から解散してしまったり、解散まではいかずとも付加給付を中止してしまったところもでてきております。
この財政難の原因は、組合が拠出する後期高齢者医療制度への負担金によるものが大きいようです。
また、膨れ上がる医療費は皆さんもご存じのことと思います。
保険料をむやみに上げるわけにもいきませんし難しい問題ですね。
ちなみに組合健保が解散した場合は協会けんぽへ移行することになります。
組合健保の場合は別々に届出!ご注意ください。
協会けんぽ加入の会社さんは、
日本年金機構(年金事務所or事務センター)へ提出することで
厚生年金・健康保険の手続きが一回で済みます。
理由としては、両者はもともとは社会保険庁の中に住んでいたので、
今でも内部的につながっているからです。
日本年金機構へ資格取得届を提出すると、協会けんぽから健康保険証が届きます。
一方、健保組合加入の会社さんは
厚生年金保険の手続き→日本年金機構へ、
健康保険の手続き→健保組合へ別々に提出しなければなりません。
健保組合と日本年金機構はつながっていないためです。
一つだけ提出して、もう一方を忘れないようにしましょう。
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いかがでしたでしょうか。
- 「組合健保」は企業が独自に設立、「協会けんぽ」は組合健保以外の被保険者を広くカバー
- 保険料率や付加給付の有無による違いがあり、組合健保にメリットがあることが多い
- 組合健保の場合、資格取得届や月額変更届を年金機構と健保組合両方へ提出する必要がある。(協会けんぽの場合、年金機構のみ)
簡単にではありますが、協会けんぽ、組合健保のことを書かせていただきました。
お時間がありましたら、皆様、お手持ちの健康保険証を見てみてはいかがでしょうか。
少子高齢化が進み、日本の医療費は膨れる一方です。
近年は予防に力を入れて病気を未然に防ぎ医療費を抑える動きや
ドラッグストア等の市販の薬購入による税所得控除を可能にし、
医療費を抑える制度(セルフメディケーションと呼ばれるものです。)等、
国としてもいろいろと取り組みを進めています。
みんなで助け合って医療制度を支えていきたいですね。
とはいえ、何かありましたら、無理をせずに、早めに治療を受けましょう。
月額変更届、算定基礎届など…
健康保険の手続きで、お困りごとはございませんか?
社会保険労務士へお任せください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
記事の内容を動画でも解説させていただきました。
併せてご参考ください。