—定期昇給でお給料がアップしたタロウくん。気になることがあるようで、総務のココアさんに相談です。
すみません、ココアさん。僕のお給料が違っている気がするんですが…
昇給は反映されてるけど、他におかしいところがあるかしら。
お給料が上がったら、社会保険料も上がるんですよね?先月までと変わってませんよ。
随時改定は昇給後、3か月の平均を見て改定に該当するか判断するから、すぐに社会保険料は変わらないのよ。
そうだったんですか。わかりました!
ブログへお越しいただきありがとうございます。
社会保険労務士の鈴木翔太郎と申します。
社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金)に加入している社員さんの給与(報酬)が昇給や降給により変動し、現在の標準報酬月額と大きく差が開くと保険料が変更されることがあります。
この改定を随時改定と呼び、行政へ月額変更届の届出が必要となります。
改定はいつから行われるのでしょうか。
どんな要件があるのでしょうか。
今回は、随時改定(月額変更届)の色々について、ご紹介いたします。
月額変更届の訂正については、こちらの別記事で紹介させていただいておりますので、ご参考ください。
今回の記事の内容を動画で解説させていただきました。併せてご参考ください!
お給料が変動!随時改定(月額変更届)はいつから?
昇給等から社会保険料(以下、健康保険・介護保険・厚生年金の総称とさせていただきます)の改定までの大まかな流れは以下の通りです。
昇給等➡3ヵ月の平均を計算➡翌月に改定
昇給をしてもすぐに社会保険料が変わるわけではありません。
早速ですが、事例を一つご紹介します。
現在の標準報酬月額が300,000円のタロウくんのお給料(基本給)が4月から変わります。
<4月~6月のお給料>
4月 330,000円
5月 350,000円
6月 340,000円
※月給制で欠勤はないので、基礎日数の要件(17日以上)は満たしているものとします。
この場合、4月~6月の平均が340,000円になります。
標準報酬月額等級表にあてはめてみます。
➡ 全国健康保険協会 令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険料
※東京支部のものとなります。健康保険・介護保険は他道府県や組合健保により異なりますが、等級の区分けは同じです。
300,000円から340,000円へ2等級変動しています。
3ヵ月の平均で判断をするため、月額変更届による改定は固定的賃金変動の3ヵ月後となります。
そのため、タロウくんの標準報酬月額は7月から340,000円に改定されることになります。
7月になったら、速やかに月額変更届を提出しましょう。
この場合、改定月(7月)前の提出はできません。
月額変更届は〇日以内という決まりはなく、速やかに提出というルールになっています。
また、多くの会社では社会保険料は翌月にお給料から控除をしているかと思います。
ということは、4月の昇給による改定は8月のお給料から反映されることになります。
お給料との関係については、➡ 後ほど掘り下げております。
まとめますと、4月に昇給があった場合…
昇給(4月) ➡ 4、5、6月の報酬の平均を計算 ➡ 7月改定 ➡ 8月給与の社会保険料から変更
こういった流れが一般的です。
※ 当月控除している会社は、控除月がずれます。
因みに、例えば3か月の平均が327,000円だったりすると、1等級しか変わっていないので、
随時改定(月額変更届)には該当しません。
次の何らかの改定の時まで、標準報酬月額は300,000円のままです。
標準報酬月額って何? 社会保険料は個別に決まらないの?
先程から登場しております標準報酬月額について、簡単に補足させていただきます。
標準報酬月額とは、被保険者の給与(報酬)を等級ごとに分けた社会保険料の計算用の区分です。
東京の現在の等級表です。(執筆現在のものです)
健康保険料率は都道府県により異なりますが、等級区分は全国共通です。
例えば…
報酬額が325,000円のケンタくん→標準報酬月額は320,000円
報酬額が319,000円のココアさん→標準報酬月額は320,000円
といった感じで、標準報酬月額は同じ320,000円となります。
それに保険料率をかけることになりますので、保険料は二人とも同額になります。
社会保険料は一人ひとり個別に決まるわけではないのですね。
標準報酬月額の解説記事は➡こちらより
月額変更届を年金事務所(健保組合)へ提出
提出するものは、月額変更届です。
年金事務所のホームページに用紙と記載例がありますので、ご紹介いたします。
被保険者整理番号は健康保険証や年金事務所の通知書に記載があります。
完成しましたら、
会社さんを管轄している年金事務所(事務センター)の適用課へ提出します。
健康保険組合加入の会社さんは、併せて健保組合へも提出することになります。
健康保険組合と協会けんぽの違いの記事は、➡コチラ
随時改定の条件はなんだろう?
ここからは随時改定の条件を簡単にご案内いたします。
随時改定の条件は以下の3つとなります。
- 昇給や降給等で固定的賃金に変動があったとき
→固定的賃金とは基本給以外にも役職手当や通勤手当なども含まれます。支給額、支給率が決まっているものといったところです。
- 変動月から3か月の報酬の平均と現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差がある
→この平均額には残業手当、深夜手当等の非固定的賃金も含めます。
また、レアケースですが、
標準報酬月額表の上限や下限へ変更する場合は一等級の変更で改定されることがあるので、お気を付けください。
- 3か月それぞれの報酬の支払いの基礎日数が17日以上ある(※短時間労働者での社会保険加入者は11日以上)
→時給や日給で働いている方の場合、出勤日数ということですね。
※平成28年10月より501人以上の事業所(特定適用事業所)に勤務する方は一定の条件を満たすと短時間労働者として社会保険に加入することになりました。社会保険適用拡大とメディアでも取り上げられてましたので、ご存じの方も多いかもしれません。
たまにお問い合わせをいただくのですが、随時改定をするのは、あくまでも固定的賃金に変動があったときです。
基本給等の固定的賃金はそのままでしたら、残業代、深夜手当などの増加で等級区分が動く報酬を受けても随時改定はしません。
給与の控除額の変更はいつから?
先ほども触れた内容となりますが、お給料から控除する金額についてまとめさせていただきます。
届け出が済んだら、給与計算の金額にも反映する必要があります。
月額変更届で変更されるのは健康保険、厚生年金保険、介護保険料(40歳~65歳の場合)です。
※ 厚生年金保険料は、保険料の上限、下限に達していると変更されない時があります。
多くの会社さんでは、社会保険料は翌月に控除しているかと思います。
先程の事例のように、4月昇給で7月の随時改定(月額変更届)のときは、8月のお給料から社会保険料控除額を変更しましょう。
また、当月に社会保険料を控除している会社さんは、7月からすぐに反映させましょう。
見落としてしまうと従業員さんの社会保険料を遡って清算するなどの業務が発生してしまうことになります。
お気を付けください。
万が一、社会保険料の変更が間に合わなかったときは正式な保険料と差額を比較して調整します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
社会保険料は将来の年金額などにも関わってくる大切なものです。
届出漏れがないように、この記事を参考にしていただければ幸いです。
標準報酬月額の解説記事は➡こちら
随時改定(月額変更届)の解説動画も併せてご参考ください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。