【わかりやすく】特別条項付き36協定の健康確保措置とは

社会保険・労働保険等手続き

今回の記事は前回の特別条項の記事の続きとなります。

合わせてお読みいただけますと幸いです。

通常の36協定はこちらの記事をお読みください。

特別条項付き36協定のなかに

「健康及び福祉を確保するための措置」(以下、健康確保措置)というところがあります。

協定を結ぶ際に、こちらの措置を講じなければならないのですが、

記載例などを見ても、詳細がわかりにくい箇所かと思います。

前回の補足として、健康確保措置について掘り下げて書かせていただきます。

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特別条項付き36協定の健康確保措置とは

まずは記載する欄を確認してみましょう。

特別条項付き36協定の用紙は厚生労働省のホームページからWord版を入手できます。

こちらよりご利用ください。記載例はこちら

こちらの青く塗りつぶしたところです。

該当する番号と具体的内容を記載していきます。

該当する番号は以下の通り(用紙の裏面に書かれています。)

  1. 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること。
  2. 労働基準法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること。
  3. 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。
  4. 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。
  5. 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること。
  6. 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること。
  7. 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。
  8. 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。
  9. 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。
  10. その他

この10項目から選んでいくことになります。

いくつ選択してもオッケー。

記載例では3つ書かれていますが、

いくつ必要という決まりはありません。

1つでも受理してもらえますが、多いほうが望ましいといったところでしょうか

とはいえ、無理にたくさん選んで、実行できないというのも良くないですので、

そのあたりも含めて、労使で話合いができるとよいですね。

項目を一つずつ確認

それでは、項目の内容を確認していきましょう。

労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること。

長時間労働による体調不良を防ぐために、医師の面接指導を行うことですね。

さて「一定時間って何時間くらいだろう。」ということですが

医師の面接指導については労働安全衛生法という法律で

1ヵ月の法定時間外労働が80時間を超えた場合、従業員からの申出にもとづいて、会社は医師による面接指導を実施しなければならない。

と定められています。

つまり、「80時間超えたから、面接指導して」と言ってきた労働者に対して面接指導をするのは法律にある最低ラインなわけです。

36協定(特別条項)を作るからにはこれより良い内容にしなければなりません。

例えば

70時間を超えた場合、面接指導をする。

などの措置で、80時間未満に基準を設定するなどの対応が必要になってきますね。

労働基準法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること。

この規定されている時間は深夜時間(午後10時から午前5時)のことです。

さて、一定回数以内は何回くらい適切かが気になるかと思います。

厚生労働省は

1ヵ月に4回以内を目安にしてはいかがでしょうか。

としています。(Q&Aより)

これは法律で自発的健康診断というものがあり、

その要件に1ヵ月に4回以上というものがあるため、それとの兼ね合いで、こういった案内を出しています。

自発的なので、先ほどの最低ラインという話ではありませんが、

この措置をとるなら、ご参考いただければと思います。

終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。

僕自身も経験があるのですが、

今日は遅くまで残業になってしまった…。でも明日も仕事だから定時には出勤しなきゃ。寝る時間もまともに取れそうにないな…

こんな経験はありませんでしょうか。

こんな状態を防ぐため、一定時間以上の休息をとりましょう、というものです。

聞いたことがある方もいるかもしれませんが、勤務時間インターバルと呼ばれているものです。

勤務時間インターバルとは

その日の仕事が終わってからと次の就業までは最低でも〇時間の間隔をあけましょう

というものです。

これについては厚生労働省は何時間という目安を提示していません。

記載例では11時間となってますね。

平均睡眠時間が7.5時間と言われていますので、これくらいが目安でしょうか。

また、労働時間に関することですので、

勤務時間インターバルを導入する場合は就業規則の変更が必要になります。

労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。

代休などの休暇を与えます、ということですね。

時間外労働や休日労働をすれば、割増賃金をもらえますが、

やはり、労働者の健康のためには休息が大事ということですね。

こちらも、何日以上といった決まりはありません。

例えば

連続で10日以上勤務したら翌日に代休を付与

といったように決めると運用しやすくなるかと思います。

また、こちらを取り入れる際も就業規則の変更が必要になりますのでご注意ください。

労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること。

こちらは、そのままの意味で健康診断を実施しましょうということです。

ただ、会社は定期健康診断を年1回定期的に受けさせる必要があるので、この措置を講ずる場合は、これとは別に健康診断を行うということになります

法改正の前ですが、僕も、100時間超の長時間労働の経験があります。

そのときは…

疲れすぎて、健康診断も行きたくない。寝ていたいよ。

という感じでした。

会社さんから、健康診断へ行くように指示されれば検診のきっかけになるかと思います。

勤務状況の基準は決められていませんが、

例えば

時間外労働が45時間を超えた月が2カ月連続したとき

または

休日労働が2週連続であったとき

などの基準を設けると運用しやすくなるかと思います。

年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること。

心身を休めるにはまとまった休みはとても有効です。

こちらも、何日連続かは決まっておりません。

2日連続では、通常の週末土曜日曜と同じですので、3日連続は最低でも必要なのかなと個人的には思います。

ただ、以前僕が小売業で働いていた当時のことですが…

基本、休みは1日ずつで、2連休というだけで舞い上がるほどうれしかったです。

そういった会社さんでしたら、2連休でも十分に効果を発揮することでしょう。

会社さんに応じた、日数設定をしていただければと思います。

心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。

これは、そのままの意味で相談窓口を設置することで足ります。

なお、この相談窓口は社外の専門機関である必要はなく、

社内で人事担当者が窓口という形でも問題ありません。

担当者が〇〇カウンセラーといった資格を持っている必要もありませんが、

学生アルバイトさんや入社間もない社員さんなどでは、さすがに不適切かと思います。

また、社内に置く場合は問題ごとが起きた際のため、相談記録をとることをお勧めします。

労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。

これもそのまま配置転換のことです。

人数の多い大企業では配置転換は比較的ありうることかと思いますが

配置転換が基本的に想定されていない企業では難かしい措置になってしまうかもしれませんね。

勤務状態の状況についての基準はありませんので、

70時間以上の時間外労働があった場合、必要に応じて配置転換を行う

などと決めておくと運用しやすいでしょう。

必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。

先程の医師の面接指導と似ていますが、こちらは産業医の指導になります。

産業医の選任義務は50人以上の会社に課されていますので、

産業医がいない中小企業はとりにくい措置かと思われます。

必要に応じて、の基準はないので

例えば

45時間越えが2カ月連続した場合

または

1カ月で70時間を超えた場合

などの決まりを作っておくとよいかと思います。

その他

その他と書かれると、余計に困ってしまうかと思います。

これは記載例にありますように例えば、時短対策会議を行うといったものが有効かと思います。

他のパターンは正直なところケースバイケースだと思うので労働基準監督署へ相談されるのが良いかと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

働き方改革の中でも、

長時間労働に関することは特に重要とされています。

命にも関わることですので、監督もとても厳しいところです。

僕が長時間労働に悩んでいた頃に、こんな制度があったらよかったな…

と思います。

会社と従業員で労働環境について、話し合うきっかけになればと思います。

煩雑な36協定のお手続きは、社会保険労務士へお任せください!

ホームページよりお問い合わせお待ちしております。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



☆この記事を書いた人☆
社労士 鈴木翔太郎

東京の秋葉原の社会保険保険労務士です。
社会保険・労働保険などの手続きを中心に労務関係のお仕事をしています。ハローワークや年金事務所・労働基準監督署へ提出する書類でお困りの際はぜひお声かけください。
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