労災保険には、一定の要件を満たした個人事業主が加入できる特別加入という制度があります。
対象の業種に、アニメ制作者など3業種が追加されることになります。
ブログへお越しいただきありがとうございます。
社会保険労務士の鈴木翔太郎と申します。
労災保険は、本来は会社等に雇われる労働者さんを保護する制度です。
しかし、一定の個人事業主フリーランスさんでも、希望すると労災保険に加入することができます。
これを労災の特別加入といいます。
令和3年度より、特別加入の対象業種が拡大されることになります。
今回は、こちらの法改正をご紹介いたします。
【法改正】フリーランスのアニメーター等、3業種が労災の特別加入(任意加入)が可能に!
まずは、こちらのニュースをご紹介します。
多様な働き方が推進されている一方で、待遇の改善を求める声が多くありました。
その改善の一つとして、
新たに3つの業種でフリーランス(自営業)をされている人が国の労災に加入できるようになります。
対象の業種は、なんですか?
今回追加された業種は、以下の3つです。
- アニメーション制作従事者(アニメーター)
- 芸能従事者
- 柔道整復師
現行の制度では、個人事業主として上記の仕事をされている人は、
業務上のケガをしても、労災保険を利用することができませんでした。
そこで、法律が改正され、
令和3年4月以降は、希望により労災保険に加入することができるようになります。
任意加入であることなど、一般の労災保険と異なる点があるので、特別加入と呼ばれています。
アニメーターさんは、腱鞘炎に悩んでいたり、柔道整復師さんは、腰痛に悩む人が多いと聞きます。
環境の改善につながると良いですね。
厚生労働省の特設ページもできましたので、ご案内いたします。
次の項からは、実際に受けられるサービスや、保険料のことについて、
アニメーターさんを例に、ご紹介させていただきます。
アニメ制作者の労災保険特別加入のお手続きは、社会保険労務士へご相談ください!
労災に特別加入(任意加入)して、受けられるサービスは?
特別と書かれているので、サービスが異なるのかなと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、受けられるサービスは一般の労災保険と同じです。
以下に列挙しますので、ご参考ください。
- 療養(補償)給付
- 休業(補償)給付
- 障害(補償)給付
- 傷病(補償)年金
- 遺族(補償)給付
- 葬祭料(葬祭給付)
- 介護(補償)給付
なに給付?よくわかりません!
いくつか、具体的にご紹介します。
療養(補償)給付は、病院の治療費の補償
例えば
アニメ―ターさんが、アニメ制作の作業中に道具で怪我をしてしまったとき。
労災保険に加入していると、
治療費は、療養(補償)給付により全額保険給付されることになります。
つまり、病院窓口での支払いがゼロ円ということです。
ただし、労災保険が使えない病院に行くと、
いったん治療費を全額支払い、後ほど払った治療費が全額振り込まれる形になります。
(こちらは、療養の費用といいます)
どちらのパターンでも最終的には、治療費がゼロとなりますが、
病院によって異なる点がありますので、ご注意ください。
休業(補償)給付は、休業中の収入保障
例えば
アニメーションの制作中、
運んでいた重い荷物を落としてしまい、足を骨折➡長期休業
といったケースで、お仕事を休むとき休業4日目から、保険料に応じた給付金が受け取れます。
それが休業(補償)給付です。
後遺症が残ったときは、障害(補償)給付
上記のように、ケガをして治療をしていたけれど、
後遺症が残ってしまった場合
障害の程度に応じて、障害(補償)給付という給付金が受け取れます。
障害等級によって、
一時金のこともあれば、年金として受け取り続けることもできます。
通勤災害もカバーの対象!
労災保険のもう一つの柱は、通勤災害の補償です。
例えば、通勤中に躓いて怪我をしてしまったときなどですね。
こういったときのケガも、労災保険の特別加入を行えば、補償がされます。
どんなサービスが受けられますか?
先ほどご紹介のものと、同様になります。
病院に行くときの治療費や、休業した時の収入保障などですね。
一般の労災保険と、特別加入の違いは?
さて、ご紹介の労災の制度は、特別加入と呼ばれるものです。
一般に労働者さんが加入している労災保険と比べて、何が特別なのでしょうか。
- 雇われている人以外でも加入ができる。
- カバーされる範囲が限られる。
- 保険料を自分で負担する。
主なところは、こういったところです。
一つずつ、簡単に解説させていただきます。
雇われている人以外でも加入ができる。
冒頭から、触れていた点です。
労災保険は、本来、会社等で雇われる労働者さんが安心して働けるように作られた制度です。
そのため、雇われていない個人事業主さんやフリーランスさんが加入できるという点で特別です。
カバーされる仕事の範囲が限られる。
一般の労災保険に比べて、特別加入では、カバーされる仕事の範囲が狭くなる点があります。
例えば、アニメーターさんですと
アニメ制作に関係する怪我等に限定される形になることが予想されます。
どういうことですか?具体的に知りたいです。
対象の範囲について、厚労省のページを引用します。
これらのお仕事に関する怪我なら対象になるということですね。
逆に、例えば銀行にお金を振込みに行ったときにケガをした!というときは労災は使えない可能性が出てきます。
要注意ですね。
保険料を自分で負担する。
一般的な労災保険の保険料は、会社(事業主)が全額負担するため、
労働者さんが、自分で保険料を支払うことはありません。
ところが、特別加入をした場合は、自分で保険料を支払うことになります。
なお、保険料は自分で選ぶ形となります。
保険料が高いほど、休業補償などの給付の額が大きくなる仕組みです。
保険料が実際にどうなるかは、次の項で解説させていただきます。
その他、特別加入の制度については、厚生労働省のページもご参考ください。
➡ 厚生労働省 「労災保険への特別加入」
(一人親方その他の自営業者用と特定作業従事者用をご参考ください。)
【具体的に!】アニメ制作者の特別加入の保険料や給付額は、いくら?
さて、ここまでは制度の概要を中心に書かせていただきました。
多くの方が、気にされていることは
保険料は、いくら支払って、給付金はいくらもらえるの?
というところかなと思います。
ここからは、保険料と給付額について具体的に確認します。
給付基礎日額によって、保険料を決めます。
先ほど、保険料は加入者が自分で選ぶとお話ししました。
保険料は、選んだ給付基礎日額によって変わってきます。
給付基礎日…?なに?
給付基礎日額は、日給のようなものと考えていただければ、と思います。
例えば、
給付基礎日額(日給のようなもの)を1万円と選択すると、
1日あたり、1万円という金額を元に保険料・給付金の額が決まります。
こんな感じです。
もっと具体的に、いくらになるか知りたい!
具体例で、確認してみましょう。
具体例で確認!
先ほどの例にならい、
給付基礎日額(日給のようなもの)1万円を希望するシンジくんに登場してもらいます。
フリーランスのアニメーターをしています。
給付基礎日額1万円で、特別加入をしようと考えています。
支払う保険料と、休業補償の金額はいくらくらいになりますか?
詳細は、後ほど解説しますが、
給付基礎日額1万円の場合、結論としては、保険料は年間で10,950円です。
(年度の途中で加入した場合は、月割りになります。)
なお、保険料以外に、事務手数料や入会金・年会費等の費用が発生する可能性があります。
休業補償給付を受け取れるようになった場合、一日ごとに8,000円受け取れます。
この金額が、高い給付基礎日額を選ぶと、高くなり、
低い給付基礎日額を選ぶと、安くなるということです。
なお、給付基礎日額は3,500円から25,000円まで、16種類あります。
他の給付基礎日額を選んだら、保険料はいくらになりますか?
特別加入制度のしおり(特定作業従事者用)を引用、一部加工したものを御紹介します。
(例2)の保険料が、アニメ制作者さんと同じ保険料率3/1,000となっていてわかりやすいです。
黄色のマーカーは、先ほどの解説の給付基礎日額10,000円のケースです。
出典:厚生労働省 特別加入制度のしおり(特定作業従事者用)を一部加工
例えば、給付基礎日額20,000円を選択すると、年間保険料は、21,900円となります。
それでは、保険料と給付額の仕組みを確認します。
特別加入保険料の仕組み
まずは、保険料の仕組みから…
保険料は年額で決まります。
日給のようなものである給付基礎日額が、例では10,000円なので、
これを1年分(365日分)にします。
10,000円×365日=3,650,000円です。これを年収のようなものとして扱います。
この年収のようなものに、保険料率を掛けます。
アニメーターの場合、保険料率は3/1,000です。
(今回の追加対象、柔道整復師、芸能従事者も3/1,000です)
3,650,000円×3/1,000=10,950円 というわけです。
特別加入保険給付の仕組み(休業補償給付)
次は、ケガなどで、休業することになったときに受け取れる休業補償給付の仕組みです。
こちらは、シンプルです。
休業補償給付は、給付率80%となっています。
(内訳は、60%+20%となっていますが、基本は80%と考えてかまいません)
そのため、日給のようなものである給付基礎日額(例では10,000円)に80%を掛ければオッケー。
10,000円×80%=8,000円です。
これが、日ごとに支給されます。(休業4日目から)
治療費は、保険料にかかわらず全額補償!
保険料の金額によって、休業補償給付の金額が上下することは、わかりました。
ということは、病院の治療費にも差が出るのですか?
病院の治療費(療養補償給付)に関しては、
保険料の金額にかかわらず、全額が補償されます。
安心ですね。
ここまでの内容を簡単にまとめます。
紙面の都合で、障害補償や遺族補償は割愛させていただきます。
厚労省のページをご参考ください。➡ 厚生労働省 「労災保険への特別加入」
まとめ ~特別加入の対象業種は、今後も追加予定~
いかがでしたでしょうか。
- 個人事業主(フリーランス)でも、労災保険に加入できる特別加入という制度があります。
- 令和3年度より、アニメーション制作従事者、芸能従事者、柔道整復師の3業種が追加されます。
- 受けられるサービスは同じですが、保険料を自分で負担するなどの違いがあります。
対象の業種は、今後も追加される予定との報道があります。
多様な働き方に対応できる社会になっていくと良いですね。参考いただけますと幸いです。
僕は、個人的にアニメが好きだったりします。
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いつも楽しませていただいているアニメ制作者さん達のためにも、
この制度が普及すればいいなと思っています。
弊記事を読んでいただいているアニメ制作者の皆様、
よろしければ周りの方へシェアしていただけますと嬉しいです。
また、twitterでは、アニメの話を投稿したりしていますので、良かったら見てみてください。
(➡twitter)
アニメーターさんの労災特別加入のご相談は、社会保険労務士へ!
このブログでは、他にも労働保険のコラムを書かせていただいております。
令和3年度の労災保険料率は、据置となります。解説記事は➡コチラ
その他の記事も➡コチラより
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント
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