—ケンタくんの会社のオサムさんが、来月で定年を迎えます。社長のケンタくんは心配事があるようです。
オサムさん、再雇用制度で定年後もうちで働いてくれることになったよ。
よかったですね。オサムさんの経験はみんなの良い刺激になってましたから。
でも、ポジションの変更でお給料を下げてもらうことになったんだ。このままなら、随時改定に該当するけど、改定までは社会保険料は今のままだよね。気の毒だな。
定年再雇用の時は、随時改定を待たないで、社会保険料の改定ができるんですよ。
そうなんだね。早速案内してみるよ。
基本給等の固定的賃金が下がった場合、社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の改定は、随時改定を待ち、月額変更届によって行うことになります。
ところが、定年再雇用の社員さんに対しては、同日得喪という特別な処理が認められています。
今回は、社会保険の同日得喪手続きのご紹介です。
【わかりやすく!】社会保険の同日得喪とは、何だろう?定年再雇用の手続きを解説!
同日得喪とは、あまり見かけないワードですが、読み方は「どうじつとくそう」です。
そんな同日得喪とは、結論から申し上げますと…
定年再雇用のときは、等級が一つでも下がれば、随時改定を待たずに社会保険料を改定しますよ。
という手続きになります。
単語を分解すると、同じ日に取得と喪失をいっぺんに処理します。
ということです。
定年の引き上げや、定年の撤廃を取り入れている会社さんも増えていますが、
60歳で定年退職→65歳まで継続再雇用、という流れをとっている会社さんのほうが多いですね。
一般に、再雇用されると基本給が下がるケースが多いです。
そんな社員さんの社会保険料負担を軽減する措置として、役立っている重要な手続きです。
本来の手続きの流れである随時改定と比較をしたうえで、実際の同日得喪の手続きを確認していきましょう。
社会保険のお手続きのご依頼やご相談は、社会保険労務士へお任せください!
随時改定と比較…
通常の流れですと、基本給が下がったときは、随時改定(月額変更届)で社会保険料を改定します。
ところが、随時改定は…
基本給が下がった後の3か月の平均を見る必要があり、標準報酬月額に2等級以上の差がないと、改定されません。
そうなると…
お給料がすごく下がったのに、随時改定を待つ間は、再雇用前の社会保険料を払わなきゃいけないの?
または…
1等級しか下がらなかったんだけど、9月の定時決定までは同じ社会保険料なの?
ということが、起きてしまいます。
そこで登場するのが、同日得喪という手続きです。
いったい、どんな手続きなのでしょう?
標準報酬月額については➡こちらの記事で解説させていただいております。
資格取得届と資格喪失届を添付書類と一緒に提出。
手続きの流れとしては、同日得喪の名のとおり、資格取得届と資格喪失届を一緒に提出します。
年金機構のホームページよりダウンロードができます。
冒頭のやりとりをもとに、一つ事例を紹介します。
まとめますと…
オサムさん(標準報酬月額380,000円)は4月30日で定年退職し、5月1日から再雇用されます。再雇用後の報酬は通勤費含め、305,000円になります。
といったところです。
再雇用後の305,000円を、標準報酬月額等級表(執筆現在の表となります)にあてはめてみます。300,000円ですね。
本来ですと、要件を満たせば8月の随時改定で300,000円となります。
ところが、同日得喪の手続きを行うと、5月から標準報酬月額を300,000円とすることができます。
再雇用後の報酬額で資格取得届を作成
では、書類を作成していきます。
資格喪失届については、5月1日資格喪失(4月30日退職)と作成します。
資格取得届については、5月1日資格取得とし、再雇用後の報酬額を記入します。
備考欄への〇もお忘れなく。
簡単な見本ですが、こんな感じです。
※事業主の押印は、現在廃止されています。
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添付書類は?
添付書類として、退職したことがわかる書類と再雇用後の契約書が必要になります。
退職したことがわかる書類って、具体的になに?
この書類は、就業規則や退職の辞令書を指しています。
就業規則は定年退職の記載部分の抜粋でオッケーです。
役員の場合は?
役員退任後、嘱託等で雇用される場合は、退職確認書類は役員会の議事録などで代用し、雇用契約書を一緒に添付しましょう。
事業主の証明を作成してもオッケー
社員、役員いずれの場合も、「事業主の証明」という書類を作成すれば、添付書類として使うことができるとされています。
「事業主の証明」については、任意の様式で問題ありませんが、年金事務所で公開されているものを参考にご紹介いたします。
健康保険証は差し替え?
さて、同日とはいえ、健康保険資格の喪失、取得がされることになります。
健康保険証の番号が新しくなりますので、保険証を差し替えることになります。
先程の書類に合わせて、健康保険証も一緒に送りましょう。
処理が終わり次第、新しい健康保険証が送られてくることになります。
保険証の発行を待つあいだ、病院へ行くときは、健康保険資格証明書の発行をご検討ください。
資格証明書についての記事は➡こちら
健康保険組合の場合、差し替えないことも
協会けんぽでは、上述の通り、健康保険証を差し替えることになります。
ところが、
一部の健康保険組合では、保険証をそのまま、差し替えないというところがあります。
健康保険組合の加入会社さんは、念のため確認されることをお勧めします。
提出先を確認
提出先確認の前に、提出物をおさらいします。
- 資格喪失届
- 資格取得届
- 添付書類(退職又は役員退任を確認できる書類+再雇用後の雇用契約書)
- 今まで使っていた健康保険証(健保組合の場合は、不要な場合もあり、要確認)
こちらを、管轄の年金事務所(事務センター)へ提出しましょう。
提出期限は、喪失届、取得届ともに5日以内です。
年金事務所の解説記事は➡こちら
健康保険組合加入の会社さんは、併せて健保組合へも提出します。
組合健保と協会けんぽとの違いの記事は➡こちら
社会保険の手続きをもっと知りたい!
という方へは、コチラの本がおすすめです。
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採用のとき、退職のときなど、シーンごとに解説されていてわかりやすいです。
記載例も豊富で、重宝しています。
雇用保険の手続きは?
これまで社会保険(厚生年金・健康保険)の手続きをご紹介してきました。
雇用保険は、同日得喪するの?
疑問に持たれた方がいらっしゃるかもしれません。
結論としては…
雇用保険については、継続雇用の方の同日得喪の手続きは必要ありません。
ただし、高年齢雇用継続給付の手続きが必要になるケースが多いです。
簡単に申し上げますと、再雇用後、下がった分の賃金を雇用保険からいくらか補填する制度です。
ご確認いただければと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
- 定年再雇用でお給料が下がった場合、随時改定を待たずに標準報酬月額を改定できる。
- 資格取得届と資格喪失届を一緒に提出。(添付書類に注意!)
- 健康保険証は差し替えになるのでいったん回収。(一部の健保組合では、継続して使用。)
定年再雇用者さんの負担にかかわってくる分野となります。
参考いただけますと幸いです。
必要な書類があり、やや面倒かもしれませんが、忘れずにお手続きいただければと思います。
定年再雇用時の年次有給休暇の扱いについて、記事を書かせていただきました。
併せてご参考ください。
同日得喪…標準報酬月額…社会保険のお手続きでお困りのことはありませんか?
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。